ウェブサイトのパフォーンスを向上させるためには、ユーザーがどのようにページを閲覧しているのかを把握することが重要です。その中でも、ページのどこまでユーザーがスクロールしているかを知ることは、コンテンツの効果を測定するための貴重なデータになります。
Google タグマネージャー( GTM )を活用すれば、スクロール率を簡単に計測し、そのデータを Google アナリティクスで分析できます。この記事では、Google タグマネージャーを使用してスクロール率を計測し、アナリティクスでそのデータを分析する具体的な方法を解説します。
スクロール率を計測するメリットとは
「スクロール率」とは、ユーザーが対象のウェブページをどのくらいスクロールしたかを計測したものです。スクロール率を計測することにより、ユーザーがどのくらいページを読み進んだかが分かります。
このことから、スクロール率を計測することは、アクセス解析を行いウェブサイトの改善案を考案する上で、大変役に立つ指標となります。
GA4 では、「拡張計測機能」をオンすることで、デフォルトでスクロール率を計測することができます(イベント名:「scroll」)。
ただしこのデフォルトの計測は、ページの 90% の割合の位置に到達した場合にのみイベント計測されるため、90% よりも細かくスクロール率を計測したい場合は、GTM と GA4 の設定のカスタマイズが必要です。
他にもユーザーの行動を把握するツールとして代表的なものに「ヒートマップ」がありますが、無料で提供されているヒートマップツールの場合、ページの一部分までしかデータが見れず、有料版でしか用意されている全ての機能を使うことが出来ないといったケースが多くあります。
今回ご紹介する、Google タグマネージャーでのスクロール率の計測は、基本的に「無料」で使うことが出来ます。また、Google タグマネージャーを既に導入している場合、作業に慣れればほんの数分で設定を完了することができるため、広報担当者やウェブマーケターにとって非常に優れたツールの一つと言えます。
Google タグマネージャーをまだサイトに導入されていないという方は、別の記事「Google タグマネージャーの使い方ガイド【これからの導入を考えている方向け】」で設定方法を解説しておりますので、是非お役立てください。
Googleタグマネージャーを活用したスクロール率計測の設定方法
それではまず、対象サイトのGoogleタグマネージャーを設定している Googleアカウント にログインして、Googleタグマネージャーにアクセスして、コンテナを開きます。
左側のダッシュボードから「変数」をクリックします。
「組み込み変数」の右側にある「設定」をクリックします。
「組み込み変数の設定」というポップアップが表示されるので、「スクロール」という項目の中にある「Scroll Depth Threshold」を選択してチェックをいれます。
これで組み込み変数に「Scroll Depth Threshold」が追加されたので、次に、 左側のダッシュボードから「トリガー」をクリックします。
「新規」をクリックします。
任意でトリガー名を入力(例:「スクロール計測」)して、「トリガーの設定」をクリックします。
「トリガーのタイプを選択」 というポップアップが表示されるので、 「ユーザー エンゲージメント」 という項目の中にある「スクロール距離」をクリックします。
これでトリガーのタイプに「スクロール距離」が選択されました。
続いて、「縦方向スクロール距離」にチェックを入れると、「割合」か「ピクセル数」を選択する項目が表示されます。「割合」が選択された状態で、入力欄に「5, 15, 25, 35, 45, 55, 65, 75, 85, 95」と入力します(この場合、対象ページの全体縦幅の5%の時点からスタートして10%毎にスクロール率を計測します)。
※なお、90%はデフォルトで計測しているため、重複しないように意図的に外します
「このトリガーの発生場所」で「すべてのページ」か「一部のページ」かを選択し、「保存」をクリックします。
この記事ではすべてのページを選択しますが、一部のページを選択する場合は、「Page URL」「等しい」「(計測する対象ページの)URL」を入力します。
これでトリガーの設定が完了しましたので、次に、 左側のダッシュボードから「タグ」をクリックします。
「新規」をクリックします。
任意でタグ名を入力(例:「スクロール率」)して、「タグの設定」をクリックします。
「タグタイプを選択」 というポップアップが表示されるので、「Google アナリティクス」 をクリックします。
続けて、「Google アナリティクス: GA4 イベント」をクリックします。
「測定 ID」に、Google アナリティクスのデータストリームの測定 ID を入力し、「イベント名」に任意の名称(例:「scroll_rate」)と入力します。
※デフォルトで用意されているイベント名である、「scroll」とは異なる名称を設定します。イベント名を「scroll」にすると、デフォルトで計測されている 90% のスクロール率と一緒のイベントとして計測されてしまうためです。
「イベントパラメータ」に任意のパラメータ名(例:percent_scrolled )し、「値」に {{Scroll Depth Threshold}} を入力します。
一番下の「トリガー」の項目をクリックします。
「トリガーの選択」 というポップアップが表示されるので、先ほど設定したトリガー(「スクロール計測」) をクリックします。
「保存」をクリックします。
必要に応じて、プレビューモードでタグの発効を確認し、挙動に問題がないことが確認出来たら、最後に「公開」をクリックします。
「変更の送信」というポップアップが表示されるので、「公開」 をクリックして全ての設定が完了です。
Googleアナリティクスでのスクロール率の確認方法
GTM の設定が完了したら、Google アナリティクスのレポートでスクロール率を表示するために、カスタムディメンションの設定を行います。
Google アナリティクスにログインしたら、左下の「管理」を選択し、「カスタム定義」をクリックします。
「カスタムディメンションを作成」をクリックします。
「ディメンション名」に percent_scrolled と入力し、「範囲」にイベントを選択、「説明」に スクロール率 と入力し、「イベントパラメータ」に percent_scrolled を選択し、「保存」をクリックします。
これでカスタムディメンションの設定は完了です。GA4 へのデータ反映にはタイムラグがあるため、設定した翌日以降にデータが取れているかを確認します。
左側のメニューの「探索」を選択し、「空白 新しいデータ探索を作成します」をクリックします。
セグメントの「+」を選択し、「イベント セグメント」をクリックします。
任意のセグメント名(例:「スクロール」)を入力し、条件にイベントの「scroll_rate (GTMに設定したイベント名) 」を選択し、「保存して適用」をクリックします。
続けて、ディメンションの「+」をクリックし、「percent_scrolled」と「ページロケーション」を選択し、「インポート」をクリックします。
セグメントの比較に「スクロール」を、行に「べージ ロケーション」をセットします。
列に「percent_scrolled」をセットして、表示する列グループ数を「10」に変更し、値に「イベント数」をセットします。
これで、各ページのスクロール深度を詳細に確認することができます。
スクロール率の計測を活かしたサイト改善方法
実際にスクロール率のデータを集計したら、そこからサイトの改善案を思考することが最も大切です。
まずは、アナリティクスでセグメントを「モバイルトラフィック」に絞った場合と、「タブレットと PC のトラフィック」に絞った場合のデータの差異を確認してみるのがおすすめです。両者に差がある場合、各デバイスでの表示に問題点がないか仮説を立てていきます。
次に、全体のユーザーの半数(50%の割合)に該当するスクロール率が何%なのかを確認します。実際のページを見ながらこの位置を確認し、ユーザーの半数がドロップ(離脱)するまでに、最も伝えたい重要なコンテンツやCTA(コンバージョンページへの導線や電話発信ボタンなど)が配置されているかどうかを確認しましょう。
もし、ユーザーの半数がドロップ(離脱)するポイントよりも CTAが下部に設置されているようであれば、CTAを上部に移動するなどの検討を行いましょう。
最後に、ファーストビューでの離脱率に着目することをおすすめします。5%~25%の深度の間に、大幅に数値が落ちているページがあれば、ファーストビューでの離脱が高い傾向にあると言えます。
もしファーストビューでの離脱が多い場合には、メインビジュアル・キャッチコピーの打ち出しや訴求内容、各デバイスでの表示速度に改善の余地がないかなどを検討してみましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、Googleタグマネージャーでスクロール率を計測する設定の手順と、計測したアナリティクスのデータからどのように分析してサイト改善のアプローチを思考するのか、例をあげながらお話させて頂きました。
もし、Googleタグマネージャーを既に導入している場合は、スクロール率の計測して、サイト改善の施策に活かしていきましょう。