ウェブ広告の世界では、限られた予算で最大限の成果を出すために、広告運用の効率化と最適化が求められます。
そんな中、新しく Google 広告のキャンペーンを作成する機会があり、設定を進めていると、あれ?何だか見覚えのないキャンペーンタイプが…
「パフォーマンスの最大化(P-MAX)」と書かれているそのキャンペーンタイプ。注釈には、「1 つのキャンペーンですべての Google サービスのユーザーにリーチできます。」と記載されています。
しかし、今まで使ったことのないキャンペーンタイプを利用するのはいつだって勇気がいりますよね。無難に、従来のキャンペーンを使おうと判断した方も多いのではないでしょうか。
実はこの Google が提供する「パフォーマンス最大化キャンペーン(P-MAX)」は、広告主にとって非常に強力なツールとなっています。
ただし、機械学習を駆使した自動化機能や複数の広告フォーマットを統合する特性から、使いこなすためにはいくつかのポイントを押さえる必要があります。
今回は、パフォーマンス最大化(P-MAX)キャンペーンの仕組みを理解し、最適な広告戦略を構築するための参考となるように解説していきます。
パフォーマンス最大化キャンペーン (P-MAX) とは
2021年11月にローンチされた、比較的新しいキャンペーンタイプ、「パーフォーマンスの最大化」キャンペーン。まずは、Google 公式の解説を見ていきましょう。
P-MAX キャンペーンは自動化された新しいキャンペーン タイプで、1 つのキャンペーンで Google 広告のあらゆるチャネル(YouTube、ディスプレイ、検索、Discover、Gmail、マップ)の広告枠に広告を配信できるのが特長です。
https://support.google.com/google-ads/answer/11189316?hl=ja
つまり、一つの広告キャンペーンを通じて Google 全体の広告枠に対して自動的に広告を表示できる仕組みです。
パフォーマンスの最大化(P-MAX) キャンペーンは、昨今の Google 広告が推し進めている自動化キャンペーンの一種で、Youtube やディスプレイ枠、検索、Gmail 、Google MAP などのあらゆる Google 広告の広告枠が配信面となるため、スマートアシストキャンペーンの進化版と言えそうです。
効果を出すコツを伝授 【スマートアシストキャンペーン】の設定方法
https://strategy-code.com/marketing-colum/ads/google/smart-assist-campaign/
しかし、スマートアシストキャンペーンは、運用者側で詳細な設定が出来ないことが大きなデメリットとしてありましたが、この「パフォーマンスの最大化(P-MAX)」ではどうでしょうか。次章以降で詳しく解説していきます。
パフォーマンス最大化 (P-MAX) キャンペーンのメリット・デメリット
メリット
先述のように、パフォーマンスの最大化キャンペーンは、ひとつのキャンペーンを設定するだけで、 あらゆる Google 広告の広告枠に配信することができます。
そのため、一つのシンプルなキャンペーンにデータが集約され、機械学習による自動最適化が進みやすいことが最大のメリットです。
従来型のキャンペーンでは、複雑な設定と運用開始後の微調整が難しく、知識がない方が自分でPDCAを回して広告のパフォーマンスを上げていくのはハードルが高いと感じることもあったのではないかと思います。
しかし Google は、機械学習による自動化配信の技術を発達させることで、 運用知識を持つ人材を内部に抱えていない多くの事業主に対しても、簡単な設定だけで広告パフォーマンスが出ることを目指しています。
スマートアシストキャンペーンの登場がその最たる例でしたが、そこに、さらに配信面や設定項目が増え進化を遂げたのが今回の「パフォーマンスの最大化キャンペーン」と言えるでしょう。
デメリット
パーフォーマンスの最大化キャンペーンは、Google 広告のあらゆる配信面( YouTube、ディスプレイ、検索、Discover、Gmail、マップ)の広告枠に配信できる一方で、どの配信面にどの広告クリエイティブが配信されたかを確認することができません。
また、従来の手動設定でのキャンペーンによる、「特定の配信面だけに絞り込んで配信する」「特定の広告のみを表示させる」という微調整を行うことが出来ず、特定のキーワードを配信から除外する設定も出来ません。
同じく自動化配信による「スマートアシストキャンペーン」では、検索ワードごとのクリック数・消化広告費を確認することができ、そこから除外キーワードのテーマを追加で設定していくことが出来ます。一方で、パーフォーマンスの最大化キャンペーンでは、検索ワードごとのパフォーマンスは確認できないため、指定するキーワードの除外設定のみ反映することができます。
このように、パーフォーマンスの最大化キャンペーンは機械学習に委ねる要素がかなり強い自動化の配信手法であるため、細かい動きが読めないことが最大のデメリットと言えるでしょう。
パフォーマンス最大化キャンペーン 設定の流れ
それでは実際に、 パフォーマンスの最大化キャンペーンの設定項目と設定の流れを解説していきます。
まずは、「重視している要素は何ですか?」という選択肢で、「コンバージョン」または「コンバージョン値」のいずれかを選択します。
コンバージョンを選択した場合は、任意で「目標コンバージョン単価」を、コンバージョン値を選択した場合は、任意で「目標広告費用対効果」を設定します。
続けて、該当する場合は、「新規顧客に限定して入札単価を設定」の項目にチェックを入れて、「次へ」をクリックします。
次に、キャンペーン設定として「地域」「言語」の設定を反映します。
続けて、必要に応じて「自動作成アセット」と、キャンペーン期間などの「その他の設定」を行います。
次に、アセットグループの設定に進みます。アセットでは、広告文やランディングページの指定、バナー画像の登録を行います。キャンペーン公開後にアセットを追加することが出来るため、設定時は最低1つの広告アセットを登録する必要があります。このあたりまではスマートアシストキャンペーンでの設定とほぼ同じです。
同じく、アセットグループの設定画面の下部に出てくる「オーディエンス シグナル」。これは従来のスマートアシストキャンぺーにはない項目です。
Google 公式の解説では、下記のように説明されています。
オーディエンス シグナルは、キャンペーンをすばやく軌道に乗せ、パフォーマンスの最適化を加速させるための重要な情報源となります。同時に、コンバージョンを期待できる新たな顧客セグメントを、自動化技術によって発掘することができます。
自社データ(カスタマー マッチ リスト、サイト訪問者リストなど)とカスタム セグメントは、コンバージョンの可能性が高いオーディエンスを示す強いシグナルとなるため、オーディエンス情報の中でも特に効果的です。
https://support.google.com/google-ads/answer/11189316?hl=ja
それでは「オーディエンス シグナルを作成」クリックします。これも従来のスマートアシストキャンぺーにはない項目です。
ここでは、「オーディエンス名」と「カスタム セグメント」、「選択したデータ」、「興味 / 関心と詳しいユーザー属性」、「ユーザー属性」の項目を設定します。
オーディエンス名を任意の名称で入力し、「新しいカスタム セグメント」をクリックします。
セグメント名を任意の名称で入力し、「これらのいずれかの興味 / 関心や購入意向を持つユーザー」または「Google でこれらのいずれかのキーワードを検索したユーザー」のいずれかを選択します。
「これらのいずれかの興味 / 関心や購入意向を持つユーザー」 を選択した場合は、下部の入力欄に、ターゲットとするユーザーが関心を持っているカテゴリや、購入に向けて情報を積極的に収集している商品やサービスに関連するキーワードを入力します。
「Google でこれらのいずれかのキーワードを検索したユーザー」を選択した場合は、下部の入力欄に、ターゲットとするユーザーが Google 検索で使用している語句を入力します。指定した語句とその類似語句を検索したユーザーに広告が表示されるようになります。
続けて、「次の対象も含めてセグメントを拡張しましょう」と記載の下の「特定の種類のウェブサイトを閲覧するユーザー」をクリックします。
ここでは、ターゲットとするユーザーがアクセスする可能性があるウェブサイトの URL を入力します。同様のウェブサイトを閲覧しているユーザーに広告が表示されるようになります。
さらに必要に応じて、「特定の種類のアプリを使用するユーザー」をクリックします。
ここでは、ターゲットとするユーザーが使用すると考えられるアプリの名前を入力します。同様のアプリをダウンロードして使用しているユーザーに広告が表示されます。完了したら「保存」をクリックします。
次に、「選択したデータ」の項目を設定します。ここでは、過去に設定したリマーケティング リストとカスタマー マッチ リストを設定することができます。これも従来のスマートアシストキャンぺーにはない項目です。
過去にオーディエンスリストを設定していない場合は、「Create a new data list」をクリックします。
この記事では、Google Analytics のデータソースと連携して、一般的なリマーケティングリストの新規設定をご紹介します。
※既にオーディエンスリストを用意してある場合は、そちらを選択してください。
「オーディエンス ソースを設定」をクリックします。
データソースを選択する画面に切り替わります。Google アナリティクス(UA)の項目の「設定」をクリックします。
「このソースで収集されるデータの種類を選択してください」と表示されるので、「このデータソースから入手できる標準のデータを収集」を選択し、「Google アナリティクス ビューの選択」をクリックします。
Google広告 アカウントとリンクされている Google Analytics のプロパティが表示されます。対象のプロパティとビューを選択します。
※Google広告とGoogle Analytics をリンクしていない場合は、リンクの設定を行ってください
「保存して次へ」をクリックします。
画面が切り替わったら、「完了」をクリックします。
Google 広告の画面に戻り、「選択したデータ」の項目に、先ほど作成したオーディエンスリストを選択します。
「興味 / 関心と詳しいユーザー属性」の項目で、購買意欲の強いセグメントやライフイベントなどを選択します。
「ユーザー属性」の項目で、性別・年齢・子供の有無・世帯収入など、広告を配信するユーザーのデモグラフィック情報を設定し、「保存」をクリックします。
アセットグループの設定画面に戻るので、「次へ」をクリックします。
続いて、広告表示オプションの設定画面が表示されます。サイトリンク表示オプションに、「アカウント単位のサイトリンク表示オプションを使用する」または、「キャンペーン単位のサイトリンク表示オプションを選択して作成する」のいづれかを選択します。
続けて、必要に応じて「電話番号表示オプション」を設定します。
さらに必要に応じて、「リードフォーム表示オプション」「構造化スニペット表示オプション」「価格表示オプション」「プロモーション表示オプション」「コールアウト表示オプション」を設定し、「次へ」をクリックします。
「キャンペーンの概要」画面に切り替わります。これまで設定した内容が表示されるので、内容を確認し問題がなければ、「キャンペーンを公開」をクリックして完了です。
事前に頭に入れておくべき注意点
導入時は既存のキャンペーンとの併用を検討すること
Google 公式の解説には次のような記載があります。
P-MAX キャンペーンは、メインで運用しているキーワード ベースの検索キャンペーンと併用するのがおすすめです。
https://support.google.com/google-ads/answer/11189316?hl=ja
併用を推奨している理由は、機械学習による自動配信は最適化に時間を要するためです。既存のキャンペーンを停止して、パフォーマンス最大化キャンペーン一択に切り替えてしまうと、最適化が進むまで一時的に成果が落ちてしまう可能性があります。
パフォーマンスの最大化キャンペーンは、通常の検索広告のキーワードと完全一致する検索語句の場合、広告が表示されない仕組みになっていますが、パフォーマンスの最大化キャンペーンの方が広告ランクが高く、パフォーマンスが上がると機械が判断した場合には、パフォーマンスの最大化キャンペーンの広告が表示されます。
※ただし、パフォーマンスの最大化キャンペーンでは、管理画面で広告ランクを確認することは出来ません。
Google広告は、同一のアカウント内であれば、成果が見込める可能性の高いキャンペーンを優先して配信されます。そのため、既に運用しているキャンペーンがある場合は、既存のキャンペーンを停止して一気に切り替えることは控え、併用して数か月経過を見るようにしましょう。
機械学習が進むまで配信が安定しないこと
機械学習で自動配信の精度を向上させていくためには、配信を広くバラまいてからパフォーマンスに繋がりやすいユーザーを絞り込むという一連のプロセスが存在します。
そのため、期間によって配信にバラつきが生じやすく、安定してくるまで数か月間要すること念頭に置きましょう。自動配信特有ですが、機械学習がいまどのステータスにいるのか予想するように心がけましょう。
アセットのバリエーションを複数用意すること
機械学習の精度向上を促進するためには、広告のバリエーションとデータ量が重要になってきます。
画像や広告文を登録するアセットは、なるべく複数のバリエーションを用意しておくようにしましょう。
オーディエンスシグナルの仕組みを理解すること
パフォーマンスの最大化キャンペーンで採用された「オーディエンスシグナル」の設定項目では、手動キャンペーンでしか設定できなかったオーディエンスリストや、興味 / 関心などのユーザー属性を設定することが出来ます。
しかし、機械学習の促進のために参考とするデータとして読み込まれるため、設定したオーディエンスに絞られて配信されるわけではないため、注意しましょう。
事業主のターゲットとなるユーザー属性があらかじめ明確に分かっているという場合には、機械学習の精度向上のプロセスである、配信をバラまいてからパフォーマンスに繋がりやすいユーザーを絞り込むという一連の挙動を早めるためにも、設定しておいた方が良いと思います。
ランディングページが置き換わる可能性があること
「最終ページ URL の拡張」がオンになっていると、自分が指定したランディングページではなく、関連性が最も高いと機械が判断した URL にランディングページが置き換わる可能性があります。
ランディングページを置き換えられたくない場合には、「最終ページ URL の拡張」をオフに変更しましょう。
まとめ
如何でしたでしょうか? 今回は、パフォーマンス最大化キャンペーン(P-MAX)に関して、特徴や注意点、一連の設定項目とその流れについて解説させて頂きました。
パフォーマンス最大化キャンペーン(P-MAX)は、Google の機械学習を活用して広告配信を自動で最適化し、様々なプラットフォームでの広告効果を最大化できる強力なツールです。
P-MAX を導入することで、広告主はターゲティングやクリエイティブを効率的に管理し、より少ない労力で大きな成果を得ることが可能です。
しかし、最大限の効果を得るためには、設定の段階からデータ分析まで継続的な調整が必要です。ターゲティング戦略やクリエイティブの改善を繰り返し、最適な運用を目指しましょう。
Google は、機械学習による自動化配信の技術を発達させることで、 運用知識を持つ人材を内部に抱えていない多くの広告主に対して、簡単な設定だけで広告パフォーマンスが出る広告プラットフォームの実現を目指しています。
ただし、機械学習を促進してパフォーマンスを早く安定させるには、自動化配信の特徴やその注意点、手動設定によるキャンペーンとの違いをしっかりと把握しておく必要があります。
それでも、今回のパフォーマンスの最大化キャンペーンの登場によって、機械学習による自動化配信がまた一歩前進したことに間違いはありません。
もし、「自社で運用しているが、うまく成果に繋がらない」「効果的な設定方法が分からない」などのお悩みをお持ちでしたら、お気軽に当社までご相談ください。