2020年に発生した、新型コロナウィルスの感染拡大防止対策による行動制限で、位置情報を活用した人流計測が、近年大きな注目を集めました。
ユーザーの位置情報の計測を活用したデジタルマーケティングは、「ジオマーケティング」と呼ばれます。
この記事では、そんなジオマーケティングの一種である、「来店計測」についてご紹介します。来店計測は、特に実店舗でのビジネスが主体となる事業者の方にとって、今後ますます重要度が増す計測手法です。
来店計測の仕組みやメリット、そしてどのように店舗ビジネスに活用できるかについて詳しく解説していきます。
ウェブマーケティングにおける「来店計測」とは
ウェブマーケティングの領域における「来店計測」とはどのようなものでしょうか。主に、実店舗を構える事業者にとって重要な指標で、ウェブ広告などのデジタル施策に接触したユーザーが、その店舗にどれだけ実際に来店したかを計測することを「来店計測」と呼びます。
Google 広告などのプラットフォームでは、「来店コンバージョン」という名称が使われていますが、「来店計測」と同じ意味合いです。
特に実店舗を構えるローカルビジネスの場合、「リスティングや SNS、SEO、MEO などのデジタルマーケティングの施策に費用をかけたけれど、その効果を上手く把握できずに困っている」といった声を多く耳にします。
それは、インターネット上で取引・決済が完了する EC サイトなどとは違い、実店舗ビジネスのほとんどのケースは、インターネット上で情報に触れた後、実際にユーザーが来店・決済して初めて売上として計上することが出来るためです。
この「ユーザーが来店する」という行動は、オフライン(インターネットを介さない)のアクションであるため、従来では可視化することが非常に困難でした。
その課題を解決するために、「GPS」や「Wi-Fi」などユーザーの位置情報を活用することで生まれたのが、「来店計測」という計測手法になります。
Google広告の来店コンバージョンの仕組み
Google広告で提供されている来店計測(来店コンバージョン)は、Google が保有するユーザーのロケーション履歴をもとに計測されます。
Google 広告に接触したユーザーの端末にその履歴が記録され、その後に実際に店舗へ来店すると、来店と広告の接触履歴が結び付けられるという仕組みです。
正確には、ユーザーがモバイル端末で Google アカウントにログインしている状態で、且つ、位置情報利用を許可している場合に計測することが出来ます。
上記条件に合致するのは一部のユーザーに限られてしまうため、Google 広告の管理画面で表示される来店コンバージョン数は、統計データによって算出された推測値であることを大前提として認識しておく必要があります。
計測に必要な要件
実際に Google 広告の来店コンバージョン計測を利用するためには、以下の要件を満たしている必要があります。
- 来店コンバージョンの利用対象となる国であること。日本は利用対象となります。その他の来店コンバージョン計測が利用できる国に関しては、Google 広告ヘルプを参照ください。
- ビジネス及び広告の内容が、デリケートなカテゴリ(医療健康・惨事紛争・宗教・性的コンテンツなど)に該当していないこと。
- 広告表示オプションで、住所表示オプションを有効していること。住所表示オプションを有効にするには、Google 広告と Google ビジネスプロフィール(旧:Google マイビジネス)の連携(リンク)が必要になります。
- Google ビジネスプロフィールで店舗の所在地が設定されており、Google 広告と連携する全ての店舗のオーナー確認が完了していること。
- 機械学習モデルを活用した推定計測のため、広告のクリック数や表示回数、来店数を推定計測するのに十分なデータ量を満たしていること。必要な量は広告主ごとに異なる。
Yahoo!広告の来店計測の仕組み
Yahoo! 広告で提供されている来店計測は、Yahoo! JAPAN の大元であるソフトバンクが提供する Wi-Fi スポットを活用した来店計測と、ユーザー端末の位置情報の送信を許可したアプリから位置情報を収集して計測する方法があります。
Wi-Fiスポットの場合は、Yahoo! 広告に接触したユーザーの端末にその履歴が記録された後に、ソフトバンクWi-Fiスポットを利用している店舗に来店すると、来店と広告の接触履歴が結び付けられるという仕組みです。
アプリの場合は、Yahoo! 広告に接触したユーザーの端末にその履歴が記録された後に、実際に店舗に来店すると、アプリの位置情報を介して広告の接触履歴が結び付けられるという仕組みで、対象となるアプリは、「Yahoo! JAPAN」「Yahoo! MAP」「Yahoo! 天気」「Yahoo! 路線」「Yahoo! 防災」「Yahoo! カーナビ」などです。
Google 広告と同様に、上記条件に合致するのは一部のユーザーに限られてしまうため、Yahoo! 広告の管理画面で表示される来店コンバージョン数は、統計データによって算出された推測値であることを大前提として認識しておく必要があります。
インプレッションやクリックごとの来店数をはじめ、広告接触から来店までの日数、ユーザーの興味関心オーディエンスなどの情報を確認することが出来ます。
計測に必要な要件
実際に Yahoo! 広告の来店計測を利用するためには、以下の要件を満たしている必要があります。
【ソフトバンク Wi-Fi スポットの場合】
- 来店計測の対象店舗に、ソフトバンクWi-Fiスポットが設置されていること。
- 計測対象期間に、来店計測目的の出稿金額が一定金額以上であること。
- ユーザーがソフトバンク または Y!mobile のモバイル端末を利用していること。
- ユーザーが広告接触時に、4G ( or 5G ) / LTE 接続をしていること。
- ユーザーが来店時に Wi-Fi の設定を有効にしていること。
【アプリの場合】
- ユーザーが Yahoo! JAPAN IDでログインしている状態で、位置情報を取得する対象のアプリを利用していること。
- ユーザーがモバイル端末で対象のアプリでの位置情報の利用を「常に許可」に設定していること。
- ユーザーの Yahoo! JAPAN IDに紐づく位置情報の送信設定が有効であること。
- 計測対象期間に、来店計測目的の出稿金額が一定金額以上であること。
その他の来店計測ツール / サービス
ここまで、Google 広告と Yahoo! 広告のプラットフォームでそれぞれ提供されている来店計測について説明してきましたが、どちらのプラットフォームにおいても、計測条件に合致するのは一部のユーザーに限られてしまうということが分かるかと思います。
また、来店計測を使うためには一定金額以上の出稿が必要となるのもネックです。ここからは、Google / Yahoo! 以外の来店計測ツールに関してご紹介いたします。
cinarra
cinara(シナラ)は、シナラシステムズジャパン株式会社が運営する来店計測・分析ツールです。「電波強度」「滞在時間」「営業時間帯」などのフィルタリングを使用し、通行人か来店者かを判断し、精度を担保しています。
計測だけでなく、性別や年代・移住地や活動エリアなどの切り口から分析ができるのも特徴です。
参考:来店計測・分析 | 位置情報マーケティングのシナラシステムズジャパン株式会社
Profile Passport
Profile Passport(プロファイルパスポート)は、株式会社ブログウォッチャーが運営する位置情報データを活用したマーケティングソリューションサービスです。
様々な提携アプリが存在し、ユーザーがそのアプリを端末にインストールしていて、「位置情報の取得を許可する」に設定している場合に、位置情報を取得するという仕組みです。
また、自社アプリにシステム連携を導入することで、来店を計測することが出来ます。ユーザーの位置情報を基に、プッシュ通知などを送信することができるのも特徴です。
参考:Profile Passport SDK | 株式会社ブログウォッチャー
MEO-ONE STORE VISIT
MEO-ONE STORE VISIT は、アナリティカル・テクノロジーズ株式会社が提供する、MEO 対策と来店計測がセットになったサービスです。
店舗に設置された Wi-fi をもとに実来店数を計測し、ユーザーの来店数を数理統計処理して算出する仕組みです。
費用対効果の測りづらい MEO 対策の集客効果を可視化するために、Google ビジネスプロフィールを閲覧したユーザーが、どの程度実際に来店したかを計測することができるのが魅力です。
コストもリーズナブルに導入・運用することができるため、ローカルビジネス・小規模店舗にも導入しやすいサービスと言えます。
参考:MEO-ONE STORE VISIT | アナリティカル・テクノロジーズ株式会社
まとめ
如何でしたでしょうか? オフラインでの来店計測は、仕組み自体は昔から存在していました。
ユーザーの位置情報の計測を活用したマーケティングは、「ジオマーケティング」と呼ばれ、来店計測はその一種です。
ジオマーケティングは、昨今の感染拡大を受けた行動制限により、人流計測が盛んに行われるようになり、注目を集めるようになってきました。
来店計測は導入ハードルが高く、実際には一部企業などに限られてしまっているのが現状です。しかし、その需要の高さから、今後はローカルビジネス・小規模店舗向けの導入ハードルの低い来店計測ツールも登場してくることでしょう。
位置情報を活用した「ジオマーケティング」が、ウェブマーケティング戦略の主流な選択肢になる日も近いのではないかと思います。