ウェブサイトの運用において「直帰率」を重要な指標として捉え、慣れ親しんできた方も多いのではないでしょうか。そんな「直帰率」ですが、2020年10月にリリースされた Google アナリティクス 4(以下、GA4 )には、これまで「直帰率」という指標は存在していませんでした。
しかし、2023年7月にユニバーサル アナリティクス(以下、UA )のデータ計測停止を控えるなか、ここにきて GA4 でも「直帰率」の指標が組み込まれました(2022年6月時点)。
直帰率に慣れ親しんできた方にとって一見、「朗報」と思われるかもしれません。しかし、実は GA4 における直帰率の定義は、従来の UA における直帰率とは異なるため、注意が必要です。
今回は、新しい GA4 の「直帰率」の捉え方について、従来との違いを理解できるように解説していきます。
GA4で復活した「直帰率」の指標
2022年6月になって GA4 で「直帰率」の指標が復活しました。しかし、なぜ当初は GA4 に直帰率がなくなっていたのでしょうか。それは、従来の直帰率の計測方法では、アクセス解析をする上で限界があったからと考えられます。
従来の直帰率の計測方法では、例えば、ユーザーがランディングページを5秒間だけ閲覧してすぐに離脱した場合と、ランディングページを10分間しっかりと熟読して離脱した場合とでは、いづれも同様に直帰としてカウントされてしまいます。
この場合、両者の行動は同じ価値と言えるでしょうか?本当に同じ直帰カウント1として計上していいのかという議論になりますよね。
また、GA4 はウェブサイトのみではなく、アプリの分析も行えるようになりました。ユーザー行動の変化に合わせて、従来のウェブサイト中心の分析から、アプリを含めた複合的な分析に対応することがバージョンアップの背景にあります。
従来の「直帰率」は、ウェブサイトの「ページ」閲覧という行動のみにフォーカスした指標だったため、GA4 では当初「直帰率」の指標を組み込まなかったのではないかと推測できます。
しかし、直帰率に慣れ親しんできたアナリティクス利用者が多く、そのユーザーの声を反映する形で GA4 に直帰率を復活させたのではないかと思います。
しかし、そこには注意点があります。GA4 で復活した「直帰率」という指標は、従来までの直帰率とは定義が異なるため、数値が大きく変わってきます。従来と同じ感覚で数値を捉えてしまうと落とし穴にはまってしまう可能性があるため、新しい「直帰率」の定義と従来との違いをしっかりと理解しておく必要があります。
従来(UA)との直帰率の違いとは
GA4 で復活した「直帰率」を、従来の UA 時代の「直帰率」と同じように捉えることは出来ません。むしろ、別物と捉えるべきです。
GA4 で表示される直帰率は、従来の UA で表示されていた直帰率に比べて、大抵の場合で大きく減少しています。
従来の考え方で数字だけにフォーカスしてしまうと、「直帰率が以前より減少した=ページ回遊率が上昇した」とポジティブに捉えてしまいますが、それは大きな間違いです。
その理由は以下に示す、従来の UA における直帰率の定義と、GA4における直帰率の定義の違いを理解すると分かります。
UA での「直帰率」の定義
従来のユニバーサル アナリティクスの定義では、【 最初にランディングしたページ(入口になったページ)から、他のページに遷移せずに離脱したセッション 】を対象に、直帰として計上されていました。
直帰率とは、その直帰と計上されたセッション数をすべてのセッション数で割った値です。つまり、「1ページのみ閲覧した=直帰した」セッションの割合が従来の直帰率です。
そのため、最初にランディングしたページに対して、ユーザーが意図したものではないと判断して数秒で即座に離脱した場合でも、コンテンツを最初から最後まで熟読して離脱した場合でも、同じ直帰1としてカウントされていました。
GA4 での「直帰率」の定義
対する GA4 での直帰率の定義は、【 エンゲージメントのなかったセッションの割合 】に変更されています。この「エンゲージメント」は、GA4 になって初めて登場した概念です。
従来のウェブページの閲覧(ページビュー)をベースにしていた直帰率は、エンゲージメントという指標をベースにした直帰率に変更されているわけです。
次章で、このエンゲージメントの概念について解説いたしますので、しっかりと理解を深めましょう。
GA4で登場した「エンゲージメント」について
「エンゲージメント」は、SNS の運用でよく耳にする概念という印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。例えば Facebook では、ユーザーが投稿をシェアやコメント、いいね!したりなどの行動を取った場合に「エンゲージメント」としてカウントされます。
しかし、GA4 では「エンゲージメント」の独自の定義があります。GA4 における「エンゲージのあったセッション」は、以下の条件のいずれかに当てはまる場合に計上されます。
- 10秒を超えて継続したセッション or
- コンバージョン イベントが発生したセッション or
- 2回以上のスクリーン ビューもしくはページビューが発生したセッション
例えば、他のページに遷移せずにそのままランディングページで離脱したとしても、10秒以上滞在した場合は、エンゲージのあったセッションとしてカウントされます。そして前述のように GA4 では、【 エンゲージメントのなかったセッション 】が「直帰」と定義されているので、この場合、従来のように直帰としてはカウントされません。
そして「エンゲージメント率」とは、【 全セッションのうち、エンゲージメントがあったセッションの割合】となります。
エンゲージメント率と直帰率は正反対の意味となるため、
- 直帰率 = 100% – エンゲージメント率
- エンゲージメント率 = 100% – 直帰率
という単純な計算になります。
従来は、何秒間滞在したとしても、他のページに遷移せずにランディングページで離脱した場合は直帰という扱いだったところが、上述の「エンゲージメント」として計上される行動を取っている場合はランディングページでそのまま離脱したとしても直帰としてカウントされません。
そのため、同じ「直帰率」という用語であっても、GA4 では従来の UA と比べて、総じては直帰率は低くなるわけです。
GA4 のエンゲージメントに関連する指標は、下記記事で詳しく解説していますので、理解を深めたい方は是非参照してください。
GA4に登場した「エンゲージメント」をシンプルに分かりやすく解説
https://strategy-code.com/marketing-colum/ga/ga4-engagement/
GA4での直帰率の確認方法
GA4で直帰率の指標を確認するには、次の2つの方法が挙げられます。
データ探索から確認する方法
指標で「+」をクリックし、「セッション」の項目の中にある「直帰率」を選択し、インポートします。
任意のセグメントとディメンションを設定し、値に「直帰率」を設定するとデータが表示されます。
標準レポートをカスタマイズする方法
例として、「ページとスクリーン」の標準レポートに、「直帰率」の値を表示させます。対象のレポート画面を開いたら、「レポートをカスタマイズ」をクリックします。
レポートデータの項目にある、「指標」をクリックします。
「指標を追加 ▼」の項目の中にある「直帰率」を選択し、「適用」をクリックします。
「保存」をクリックして、「新しいレポートとして保存」を選択(念のため、上書きではなく複製するようにします)して、任意のレポート名を入力し、「保存」をクリックします。
保存したレポートは、「ライブラリ」の中に格納されます。対象のレポートを開くと、直帰率の指標が挿入されたレポートを確認することができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか? 今回は、GA4 で復活した「直帰率」の新しい定義と、従来との違いについて解説いたしました。
同じ「直帰率」という用語であっても、変更された定義を認識せずに数値の変化だけをそのまま捉えてしまうと、誤ったアクセス解析に繋がってしまう恐れがあります。
GA4 は、今後も新しい変更点や指標、機能のアップデートなどがあることでしょう。適切なアクセス解析から効果的な施策立案を行えるように、常に新しい情報にアンテナを張ることが大切ですね。